れとろげ。

ファンタジー風創作小説『ようこそ麒麟亭へ』

2009年06月25日

ゲーマーたちへの愛と業(後編)


ソフト会社と小売店の険悪な関係 日本のゲーム産業の課題(2) :IT-PLUS
http://it.nikkei.co.jp/digital/news/index.aspx?n=MMITew000016012009&cp=2

 日本のゲーム産業では、在庫リスクを小売店が負う形になっている。通常、一度仕入れたゲームは小売店からゲーム会社に返品できない契約である。小売店に出荷した段階で、ゲーム会社は確実に収益を得られるが、その先のユーザーに売れるかどうかは小売店の責任であり、売れずに残った在庫による損失は小売店がすべて被る。小売店側へのマージンは少なく、10本仕入れて1本残れば赤字といわれる。

(中略) 
 
 一方、小売店の力が強く返品が完全に認められている北米では、こうしたことは今後も起こりえない。大手パブリッシャーでなければ在庫リスクを負うことができないからだ。

 日本では結局、在庫リスクを誰に回すかという駆け引きのなかで小売店への押し付けが起き、小売店はそのリスク回避のために中古を販売し、結果として新品が売れずにゲーム会社の収益が伸びないという、産業としては誰の得にもならない状況を招いている。






■ダウンロードコンテンツの先駆者

前回の go に続いて、今度は i のほうのお話。

と言ってもDSのほうじゃなく、新機種3GSが明日6/26に発売されるiPhoneのほうね。

海外では、ゲームをダウンロード販売できる媒体として、このiPhoneの人気が高まっているのだ。

上で引用したように返品が認められている北米市場などでは、
大企業でなければゲーム開発のリスクを負い切れなかった。

ところがiPod touch、iPhoneの普及によって、
小規模でも開発ができ、手軽に配信できる環境が整ったことで、
専用のアプリやゲームが爆発的に増えてきている、というわけ。

あちらでも大作主義が行き詰まりはじめ、
日本から数年遅れで携帯機バブルが到来した状態と言えようか。

「PSP go」の仕様も、
海外市場においてiPhoneのダウンロードスタイルを意識すると同時に、
返品によるロスを削減しようという意図があるとも考えられる。


■見えないものはお金で買えるか

で、こうなると例によって日本でも「じゃあiPhone用に何か作ってみようぜ」となるわけだが……
これまでの日本市場の場合は、問屋に買い取ってもらった段階である程度まとまったお金を回収できるし、
たとえ大ゴケして赤字を出したとしても、銀行やハードメーカーとの関係さえ保てていればそれなりに何とかなったりした。
しかしiPhone用のゲームをダウンロード販売しても、
人気がなければ本当に全くお金が入らない。
参入の敷居自体は低くとも、継続したビジネスとしてはむしろリスクが高いのではないかと思われる。


有料でiPhone用のアプリやゲームをダウンロードしようという層は、おそらくまだまだ10万にも満たない。
最低でも8千~1万、つまりそのうち10人に1人はダウンロードしたくなるレベルのものを作れなければ、
ビジネスとしての成功は厳しいだろう。

日本人は無形のものにお金を支払うのを敬遠する傾向があり、
ダウンロード販売に対する精神的な敷居がまだまだ高いのだ。




  (100円や300円のアプリをダウンロードでポンと購入するというのは、
   西洋のチップ文化に通じるところがあるのかもしれない。
   逆に日本人は、コンビニで数百円の買い物をするときでも、
   すぐ捨てるにしても一度はレシートを確認しないと、
   何となく落ち着かないという人が多いんではなかろうか。
   医者とか行って薬がもらえなかったりすると、
   結果的に安く付いたはずなのになぜか損した気分になるし)



基本料金や通話料と一括で納めることでその心理的抵抗を軽減したのが携帯アプリなわけだが、
PSPでのダウンロード販売が浸透することにより、日本ユーザーの意識も変化させていくことができるのか。
てゆーかそもそも、ただのダウンロードデータに5千円とか払えるのか?
ディスクに焼いたかどうかの違いでしかないと、頭では理解していても。



デジタルの代名詞だったTVゲームソフトが、
世の中がデジタル化に向かう大きな流れの中で、
むしろアナログ側の尖兵として矢面に立たされている。

ゲームをアナログな商品として見るか、デジタルデータの塊と見るか、
作り手と売り手と遊び手、それぞれが結論を出さなければいけない時期に差し掛かっているのかもしれない。
その答が、今後のゲーム業界を左右することになるだろう。


同じカテゴリー(本当はヤバくない日本ゲーム業界)の記事画像
ちょっとヤバくなってきた? 日本ゲーム業界
ゲーマーたちへの愛と業(前編)
番外:日本が抱える借金?
本当はヤバくない日本ゲーム業界(下の2)
本当はヤバくない日本ゲーム業界(下の1)
本当はヤバくない日本ゲーム業界(中)
同じカテゴリー(本当はヤバくない日本ゲーム業界)の記事
 ちょっとヤバくなってきた? 日本ゲーム業界 (2009-10-16 22:52)
 ゲーマーたちへの愛と業(前編) (2009-06-22 17:58)
 番外:日本が抱える借金? (2009-02-13 16:15)
 本当はヤバくない日本ゲーム業界(下の2) (2009-02-04 19:07)
 本当はヤバくない日本ゲーム業界(下の1) (2009-02-02 18:47)
 本当はヤバくない日本ゲーム業界(中) (2009-02-01 00:05)


この記事へのコメント
ディスクに焼いて販売しているMicrosoftOfficeですら、ン万円すると言えばドン引きする人が未だに
絶えないですし、またマジコンなんていうアングラアイテムを、子供・一般人が(禁止になったとはいえ)
普通に所有・利用している現状、データというものはまだまだ軽く安く見られているかな、と感じます。
扱いが大変な物を簡単にしてくれたという、先人の努力があったはずなのですが。

(自分が知らないだけかも知れませんが)PSP自体が不振というわけでもないのに、PSPgoは随分と
大きな賭けに出たと思いました。各所で言われてる事ですが、せめてUMDは切らない方が良かった
と思います。互換機能をバッサリ斬り捨てたハードで成功したのって、SFCだけな気がしますし。

長々と拙い文で恐縮ですが、失礼しました。
Posted by マシンオー at 2009年06月25日 22:59
今のところgoはあくまで亜種であり実験機という位置づけだと思いますよ。
いわばRX-78ガンダムに対するEz8のような存在。
その先にはダウンロードを見据えているとは思いますが。

ゲームソフトを「物品」と捕らえる限り、在庫リスクと流通コストの問題がつきまとうわけで……悩ましいところです。


データの中でも、シナリオや雑誌のテキストなんかはさらに扱いが低かったりしますね(笑)
Posted by 白川嘘一郎白川嘘一郎 at 2009年06月25日 23:22
この一連の雰囲気は、まだディスケットでPCゲームがプレイされていた時代から、HDDへのインストールが主流になりつつあった頃の過渡期を思い出しますね。
当時の文章に、「ユーザーにも、HDDへのインストールが出来るだけの知識が要求されるようになった」などと書かれていたものです。
今回の件でも、ユーザーが変化についてこられるかどうかの過渡期に入りつつあるとは思います。

ただ、小売店を排除した販売方法になるとすると、ゲームの雰囲気がつかめなくなる不安はありますね。
ディスクシステムの書き換えサービスのように、小売店も利用できるようなシステムなら良いんですけどね……。

>あくまで亜種であり実験機
そう言えば、大コケした実験機がありましたね。
PSX……(w
Posted by 市藤勇美 at 2009年06月26日 21:45
どのへんを落としどころにするか、本当に難しい問題です。

ドコモショップやauショップみたいにハードメーカーと提携して、
ダウンロード代行とか別売パッケージとマニュアル販売とか、新作ソフト案内とか、
小売店は将来的にはそういう形態で生き残るカタチになっていくのでしょうか。
Posted by 白川嘘一郎白川嘘一郎 at 2009年06月27日 23:44
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。