れとろげ。

ファンタジー風創作小説『ようこそ麒麟亭へ』

2009年02月04日

本当はヤバくない日本ゲーム業界(下の2)

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「前回までは主に、資金源の拡大と、売上本数を増やすことを考えてみたが、
 次に利益を上げるためのもう一方の視点、『製造コストを下げる』方法を考えてみよう。
 もっともゲームの場合、コストの大半は人件費なので、その手段は限られているわけだが」


 「あっ、ここまで来たらもうわかってきたよ。

    “地”の秘策とはつまり、
    福岡のレベルファイブ、岐阜の日本一ソフトウェア
    今井秋芳監督の名古屋のSKYWALKERとかみたく、
    地価や賃金の安い地方への分散だねっ!」




「うん、まぁメーカーの地方分散もアリなんだが、
 ここはさらに先を行って、この円高を逆手にとって、いっそ海外に拠点を置くのはどうだろう。
 
 税金や人件費の安い国の都市部の一角を借り上げて“日本人ゲーム村”を作り、
 開発チームは数ヶ月単位でそこに滞在して、
 日本人と現地人7:3ぐらいで業務を行うわけだ。
 
 今やネット環境さえあれば打ち合わせやデータのやりとりにも不自由しないし、
 どうせ制作が佳境に入ったら、家なんて風呂入って寝るだけなんだから
 日本じゃなくてもどこでも一緒だろ
 

 
 
 「国際的と言えば聞こえはいいけど、まるで現代の野麦峠だね!
    ところでなんで7:3なの?」




「いや、本当はなるべく現地スタッフを育てないとメリットが薄いんだけど、
 まともに業務を行おうと思ったら3割ぐらいが限度かなぁ、と。
 
 私はたまたま10年前から、中国に外注に出した仕事の顛末を横から見てたけど、
 彼らに限って言えば、この10年間なーんにも進歩してないよ。
 
 直しました、と言って送ってきたデータが全く直ってなかったりとか、
 マスター直前にメインプログラマーが結婚するからと言って突然いなくなったりとか、
 根本的に仕事に対する感覚が違うんだよね。
 彼らの立場からすれば、よくわからない異国のゲーム作りに向上心やモチベーションを持てというほうが酷なのかもしれないけど。
 
 昔は、日本のゲーム会社の下請けでプログラミング技術を習得したあと、
 軍に雇われて日本に向けたミサイルの弾道プログラミングをする、なんて笑えない笑い話もあったし。
 
 正直、全部日本でやったほうが最終的に効率いいんじゃね? といつも思うんだけど、
 それでも外注し続けるってことは、それだけコスト対策として効果的なんだろう」
 
 
 「それにしても、こんなスケールのデカい話より
    日本のマスコミが心を入れ替える方が実現性の低い理想論だってのが何とも……。
    で、最後の“人”の策は?」




「これは、策と言うより一種の期待かな。
 日本のゲーム業界のいちばんの強みは、どんなに低迷しようが
 クリエイターたちが決して諦めようとしないことだ。

 思うようなゲームを作らせてもらえない情勢の中で、
 じっと堪え忍んで爪を研ぎ続けてきたクリエイターたち。

 『どうせ何作ってもあまり売れないんだったら好きなものを作ってやる』
 抑圧された情念が出口を求めて爆発する傾向がそろそろ感じられはじめている」


 「確かに、ライトゲームとキャラゲーと移植モノと続編モノばっかりだった1年前の冬と比べれば
    最近なんだかちょっとだけ雰囲気が変わってきたような気配が
    感じられたりしないこともないね」



参考:2007年の年末商戦のラインナップ( 電撃オンライン ソフト発売スケジュール)



「単なる精神論だけでなく、実際この1~2年間で、
 過去作品のリメイクなどによって、ノウハウを蓄えたメーカーも多いはず。
 濫造される移植やリメイク作品からも、新たに得られるものはゼロではないんだ。
 
 そしてこの2009年は、中小のクリエイターたちがいかに
 あの手この手で突破口を開くのかが見どころ。
 カギはWebや他メディアとの連動と、配信コンテンツってところか。

 ただ……PS3だけは、このヨダレの目をもってしてもまだ未来は見えぬな」


 「すりーさん……」
 
 
 
「最近、DSやPSPでリメイク作品をプレイしていると、
 『このゲームってこんなに携帯ハードと相性良かったのか』と思うことが多々あるんだよ。

 これまでは据置型が主流で、携帯ハードはあくまでサブという固定観念があったけど、
そもそもゲームって、別に自宅で閉じこもって遊ぶことにこだわる必然性は何もないんだよね。
 携帯ハードなら、通勤通学の時間や、友達の家で、あるいはTVを横目で見ながらでもプレイできる。
 少なくとも90年代ぐらいまでゲーム業界が求めていた理想の姿というのは、
 実は携帯ハードにあって、ようやくスペックがその理想に追いついてきたんじゃないかと。
 
 据置機でないとまだ技術的に実現できないのは、無双系アクションやフリーローミング、本格スポーツゲームにカーアクションなど演算処理が膨大なものぐらいだけど、
 実際、PS3やXBOX360で売れてるのは、そういったゲームだけ。
 つまり極端に言えば携帯ゲームのスキマで保ってるようなものだからな」
 
 
 「そして根本的に携帯ハードでは不可能なパーティーゲームやマルチ対戦、
電子玩具的ギミックをカバーするのがWiiか」




「今の子供たちにとってはゲームと言えばまずDS、という感覚だろうし、
 携帯ハードのスペックは今後さらに進化する。
 将来的にはもう、こちらが主流になるという意識を持っていかないと、いよいよダメなのかも。
 
 ただ現状、今すぐ据置ハードに廃れてもらっては困るので、何とか頑張ってほしいんだけどね」


 「そのための具体策を示すのがこの記事の主旨じゃなかったっけ?」



「そこまで現実性のあるプランがあれば、こんなところに書く前に自分で売り込みに行ってるわ。

 まぁ、もしここを読んだゲーム業界の方がいれば、何か着想のとっかかりにでもなってくれればいいなー、というのと、
 あと、ユーザーたちが巷のネガティブな流言に惑わされないために、ってのも本音かな」
 

 「ぶっちゃけ半分はただのマスコミ批判だったよね」



「だって、あいつらのせいで、俺たち詐欺師は仕事がやりにくくってしょうがないんだもん」


 「さてさて、そんな詐欺師の読みが的中するのか、
    あるいは大ハズレで赤っ恥をかくのか。
    それではまた近いうちにお会いしましょう。
    僕らの勇気がゲーム業界を救うと信じて……!

 

 
「だから終了フラグはやめろ!」





ご愛読ありがとうございました




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この記事へのコメント
はじめまして
大分前に買ったバカゲー専科で白川氏の文章を読み、
「面白い文章を書く人だなあ」
と思っていたのですが、偶然にもブログを発見してしまいました。
というのも2ヶ月ほど前の話で、毎回楽しく読ませていただいております。
今回は連載ということで。こういうのもまた面白いですね。
詐欺師・白川氏のこれからのご活躍、期待しております。
Posted by ゆ at 2009年02月05日 00:31
>ゆさん
昔から読んでいてくださったようで、どうもありがとうございます。

贔屓目を抜きにしても、日本のゲーム業界には
ここに来て追い風が吹きつつあり
乗っかるなら今だろ! と思うのですが、
もっと詐欺師としての位を上げないとまず話も聞いてもらえません。

とりあえずプチプチとスライムを潰して経験値を稼ぎます。
Posted by 白川嘘一郎白川嘘一郎 at 2009年02月05日 10:22
個人的には、メーカーと日本のゲーム雑誌体制も
いろいろとむにゃむにゃでぐぬぐぬ。
Posted by んま at 2009年02月05日 18:25
そのへんはもう言わずもがなっちゅーか、
全てのスポーツファンが東スポを買うわけでないのと一緒で、
あくまで一部のマニアの遊び場でしかないんで、
ぶっちゃけ無くてももう大勢に影響ないから、みんな好きにやればいいと思います。
Posted by 白川嘘一郎白川嘘一郎 at 2009年02月05日 18:30
すべて読ませていただきましたー
「マスコミのゲーム批判」は確かに感じますなー
TVはマスコミの物と言う時代は終わってきている上に
趣味の細分化以外にも、コンテンツ不足の地方では
CS放送の優位化がやや進んでいたりとかしてるので
TVももう少しゲーム寄りに歩んでもいいんじゃないかなと
「レイトン教授」のTVコンテンツ化のアイデアはクイズブームの時流に乗れば
確かにウケが良さそうな予感が

そして「日本人ゲーム村」に関しては
日本のプログラマが不遇と言うネタをある程度知っていたので
個人的にはやってもオモシロそうだなとは思いますね

そして、ユーザーに関して言いたいのは
「勝者は1人であれ」と言う法則が崩れていて、
「国家三分の計」、「三権分立」のような状態が望ましいかな、と思ってます
DS、Wii、360と、昔のSFC、MD、PCEみたく層がきちんと分かれているのなら、いがみ合わなくてもいいんじゃないの? とも。
Posted by みゅうま at 2009年02月09日 16:00
ユーザー同士のいがみ合いって、結局ネットだから加熱して見えるだけで、
実際のセールスにはほとんど影響しないと思いますけどね。
いわばサッカーのフーリガンみたいなもので、
それでチームの成績が変わるわけでもないし。
Posted by 白川嘘一郎白川嘘一郎 at 2009年02月09日 21:58
 
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