れとろげ。

ファンタジー風創作小説『ようこそ麒麟亭へ』

2009年01月30日

本当はヤバくない日本ゲーム業界(上)

「ゲームを愛する引きこもりの皆様、こんばんは。

 唐突だが、2009年も早や1月が過ぎ、
 オバマ大統領就任やら何やらで激動する世界の中で、日本のゲーム業界の行く先を考えてみたいと思う。

 こちらは、話の相手役として、無意識の海に浮かぶ混沌の月より召還せし魔天使ウサギエル」


 「やぁ! そんなわけで呼ばれてみたよ。
    そう言えばよくあるよね! こういう聞き手との対話形式に見せかけて
    一人で書いてるだけってブログ」




「それには2つの理由があってね。1つには論点を明確にしてわかりやすくできるから、
 そしてもう1つは、話し手の方が上位に立つことでなんとなく説得力が出るからだよ」

 
 「は~なるほど!
    ゲームメディアと制作現場の末端に中途半端に片足ずつ突っ込んだだけの下っ端の分際で、
    こうすると確かになんだか偉そうに見えるね!」




「呼んでおいて何だが少し黙れ。
 まぁ些細なことは気にしないことにして、まず順を追って見ていこうか。
 一昨年あたりからかな、日本のゲーム市場の冷え込みが激しいので、
 これからは欧米市場への展開を考えていかなきゃいけない、という意見が主流だった時期があったんだよ。
 分母の絶対数を増やせば売上げ本数も増えるだろうという考え方だね。
 
 結果から言うとこの流れは失敗に終わっているわけだが、
 ま、今だから言うが私は最初から眉唾モノだと思っていたけどね。」


 「あとからなら何とでも言えるもんね! で、その根拠は?」



「そりゃ簡単だろう。ゲームに限らず今まで、
 日本が最初から欧米をターゲットにして作って売れたものがあったかい?


 「そう言われると……無いよね



「日本人が日本人向けにコツコツ作ったものの良さを、数年~数十年遅れて理解するのが連中のパターンなんだよ。
 日本人は海外の製品の良い部分を、念やスタンド能力かと思うほどの速さでコピーするけどな。

 ハリウッド映画や洋ゲーが日本で売れるのは、単純にそれらが優れているからってだけじゃない。
 日本人の異文化に対する寛容性・適応力がハンパないからだ。
 それと同じレベルを海外市場に求めること自体がすでに間違っているのさ」


 「携帯電話なんかも、日本国内では
    着うただカメラだワンセグだ音楽プレイヤーだお財布ケータイだ防水だと
    極端な多機能に特化しすぎたせいで、
    国内で求められている水準をそのまま海外に持っていってもサッパリ売れないらしいね! 
    日本人って本当に変態だよね!」


 
 
「そこであえて機能を絞ってグローバル化する戦略もありっちゃありだけど、
 民族性や文化が大きく影響するエンターテイメントの分野ではそもそも無理がある。
 
 いいかげん日本人は、『日本は欧米のあとを追いかけている』という幻想から脱却すべき時に来ていると思うね。
 日本がすでに通った道を別の歩法で進んでいる姿は、参考にはなるけれども」


 「ほうほう。すでに通った道とまで言いますか」


「今回の世界的金融危機がそうだからねー。

 ものすごく大雑把に言うと、日本でも数年前に大騒ぎになったライブドアみたいなことを世界規模でやっちゃった結果がこのザマだよ。
 日本はここ10年ほど、GDPの順位が後退し続けてるとか言われてたけど、
 ちなみに2007年度で世界第4位だった国がどこか知ってる? アイスランドだよ」


 「ええっ!? アイスランドって確かこないだ経済破綻した国家じゃ……」



「そういうこと。実体のない金融バブルを膨らませてきたのがとうとう破裂したってだけの話。
 他にもこの10年間で日本を追い抜いた国ってのはほとんどヨーロッパの国々なんだね。
 10年前とヨーロッパ、この2つのキーワードから思い当たるものは?」


 「……ユーロ! そっか、通貨統合でユーロの価値がバブったから、見かけ上の数値が急騰したに過ぎないんだね!」



「もちろんそれだけの要因ではないけども、参考までにユーロ対円の相場の推移を見てみると面白いよ」






 「うわぁ(笑) 急降下だ」



「日本はドルに対しても円安政策をとっていたから、ドルに換算すればさらに差は開いてたわけ。去年まではね。

 ところが日本はすでに90年代の不動産バブル崩壊で痛い目を見ていたので、
 欧米が金融工学という現代の錬金術に浮かれている間も、ひたすら愚直に、実体のある経済だけを回し続けていたんだよ。
 もちろんこの厳寒の冬の中で日本も楽は出来ないだろうけど、アリとキリギリスの差がここで表われてきたわけだね」


 「そんな苦労をして冬を越す働きアリも、寿命はせいぜい1、2年だけどね。
    それにしてもGDPだの何だのって、国の通貨レートの変動だけでそんなに変わっちゃうものなんだ。
    意外とアテにならない指標なんだね」




「こういう国と国との相場や金利の差を利用して、お金をあっちこっちに移動させては、
 実体のない見かけの数字が増えたと言って喜んでいたのが、この金融バブルなわけさ。
 さて、話をゲームに戻すが」


 「深く突っ込まれると、単なる受け売りであることがバレるからだねっ!」



「そんなわけで海外で日本のゲームを売ろうと目論んで失敗した連中が慌てて
『海外のゲームはすごい、日本は追い抜かれた!』とかヒステリックに叫んでいたのが昨年2008年までの状況」


 「なんかゲーム以外のどの業界でも同じようなこと言ってなかった?」



「うん。世界中で国家経済が飛ぶかどうかという時期に、
 日本はゲームやPCや車の売上を心配していましたとさ。
 まぁ、そういうネガティブさというか自己卑下精神が、前述した日本人のアリ的体質を支えている面もあるから、いちがいに否定はせんけどね。

 では本当に洋ゲーは日本より先を行っているのか?
 単純にハードの技術が底上げされているので凄いように見えるけど、
 これも実は数年遅れで日本のたどった道をなぞっているだけ、という気がする。

 要するに、ひとつのタイトルに膨大な予算と人員をつぎこむ大艦巨砲主義だね。
 こうやって制作されたゲームは確かに素晴らしい出来だったけど、内容が複雑かつ大げさになりすぎて
 日本では逆にライトユーザーや新規層のゲーム離れを引き起こす要因のひとつになってしまった。
 そこにさらに不況の追い討ちがかかり、日本ではもう大作は限られたメーカーしか作れなくなってしまった。

 そして今年から日本より遙かにスケールの大きな不況がアメリカに襲いかかるわけで……。

 すでにその兆候は出ているけど、いくつかの大会社が続編タイトルを出すだけという時代がしばらく続くんじゃないかな。少し前の日本みたいに」


「それでも日本のゲーム業界には、携帯ハードの低予算ドット絵ゲームとか、
    テンプレに沿って簡略化された作業量で最低限の固定層はゲットできるギャルゲーとかとの受け皿があったけど、欧米はどうなるんだろうね……」




「人件費は日本以上に高騰しているし、リストラやら海外発注も増えてきているらしい。
 もともと 『今はゲーム業界が儲かるらしい』 、って理由で入って来たスタッフが多いから、
 『少ない賃金で夜中までこき使われても、ゲームを作れれば幸せ』 、みたいなオタク根性のあるクリエイターがどれほどいるかも疑問だよな。

 仮にこれらが杞憂だとしても、どっちにしろこの円高で日本製品を海外で売るのは厳しくなるので、
 昨年から海外ゲーム市場に乗り込もうとしていた企業は、
 やっぱりバカを見たという結論にならざるを得ないね」


「うーん、でも任天堂やコナミやカプコンといった大手は
    確かに海外メーカーに負けないじゅうぶんな売上を上げてたけど、
    その他の中小メーカーが落ち込んでるのは事実だよね?」




「そうだね。それについては次回の中編で語ろうか」




つづく


※ちなみにタイトルは敬愛する某先生(笑)のブログより拝借させていただきました。



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この記事へのコメント
初めまして。よくわからないですが勉強になりました。
いちいちでてくるうさぎに笑いが起きました。
Posted by 煌 at 2009年01月31日 17:14
これと連動した話じゃないけど
「女性向けゲームは、ゲームを普段あまりやらない人に
向けて作ってるから、手を抜いてる」って話を聞いたことがあります。

逆に、普通じゃ絶対出てこない発想のゲームもあるんだけど、
総じて手抜きAVGが多い理由はなるほどなあ、と。

もちろん、それだけじゃないんですが。
Posted by んま at 2009年01月31日 21:49
>煌さん
初めまして。
このウサギはこのブログの真の主です。


>んまさん
女性向けと言っても色々ありますが、恋愛系ゲームに関しては手は抜いてないと思いますよ。
こだわる部分がズレてたりするだけで。
女性向けライトゲームは確かに手を抜いてるかもしれませんね。
実際、予算かけるほどの購買層はいないですし。
Posted by 白川嘘一郎白川嘘一郎 at 2009年02月01日 00:27
 
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