れとろげ。

ファンタジー風創作小説『ようこそ麒麟亭へ』

2008年12月19日

ジレンマのないヤマアラシ

寄り添えばそのトゲで相手を傷つける。

 「――だったら寄り添わなければいいだけの話じゃないか」

 ヤマアラシは一匹でお花畑の中へと歩いていきました。
 綺麗な花に囲まれ、ヤマアラシは幸せでした。

 お花畑の中を歩いているといつの間にか、
 気付かぬうちにヤマアラシのトゲには
 花がたくさんくっついていました。

 花を背負ったヤマアラシを見て、皆は遠くから
 「綺麗だね」「面白いね」と楽しそうに笑いあいました。
 ヤマラシはとても、幸せでした。


            ――『ウサギエル書』 第二巻7節


哲学者ショーペンハウアーが書き記した寓話に
心理学者フロイトがご大層な解説を付け、
エヴァンゲリオンで一躍知られるようになった「ヤマアラシのジレンマ」

と言っても、ヤマアラシという種が現存するということ自体が、
どんなに鋭いトゲを持っていようとも、生殖行為に支障はないという証明なんですけどね。


言葉には人を傷つけるチカラがある。それは確か。
ましてインタァネットが進歩した昨今、
それはもうミサイルのごとく遠距離で広範囲で無差別な攻撃が可能になってしまい、
現実世界同様に「撃つと撃ち返されるので撃たない」という緊張状態を抑止力とするやり方が主流に。
それに比べれば、ちっぽけなヤマアラシ1匹のジレンマなんて些細なものです。


トゲが届く距離にいられるというのは、幸せなコトだよ。


ハリネズミ


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