れとろげ。

ファンタジー風創作小説『ようこそ麒麟亭へ』

2011年02月10日

最前線で旗を振ると背中から撃たれる。


久しぶりに、レトロゲームについてかなりの長文を書きます。



『れとろげ。』のSTAGE008で、映画がらみの話題でチラッと登場し、

昔の『バカゲー専科』でも取り上げた
『シャーロックホームズ 伯爵令嬢誘拐事件』について、
いまだに反論(?)があったりします。


「原作中でもホームズはボクシングや武術に精通している描写があるし、拳銃も使う。
それで犯人を取り押さえたりすることもあるから、このゲームは原作に忠実なんだ!」

誰が得するのかわからない無理な擁護が試みられてたりもしますが……。

いやいや、それは知ってますよ。
ドラッグを常用したり、自室内で暇つぶしにいきなりピストル撃ってみたり。

でも、そういった設定は、基本的に
相手の服装や仕草を一瞥しただけで素性を見抜いてしまうようなホームズのキャラクター性に
さらにアクセントとして添えられているから意味があるのであって、
ゲームでそこだけ抽出しちゃったらただの狂犬ですよ。

ましてや、たとえ相手が悪人だからって、
根拠もなくいきなり自分から襲い掛かったり、
大通りで銃を乱射したり……しないと思うけどねえ。ホームズは。



また、「当時のファミコンゲームはアクションが主流で、
何でもかんでもアクションゲームになってた時代なのだからおかしくない」

というご意見もあります。

しかしながら、当時の背景まで含めてゲームを語ろうというのであればなおのこと、
当時の本好きな小学生にとって、
名探偵シャーロック・ホームズや明智小五郎がどのような存在だったか

考えねばならないでしょう。

TVゲームという形をとっていなくても、
『ミステリー、探偵小説』という名の知的ゲーム
すでに少年たちの身近にありました。

実際私も、購入こそしていないまでもファミコン雑誌か何かで見てはいたのですが、
そのホームズがファミコンゲームになると聞いて

「ああ、ファミコンってグラフィック機能とかも限界があるし
 ジャンルもまだまだ未分化で未成熟だから
 こんなアクションゲームになったんだね! じゃあ仕方ないや!」

と納得する子供がいるでしょうか? いるわけがないです。


要するに「当時のファミコンはアクションが主体だった」と言うならば、
じゃあ「ホームズをファミコンゲームにしよう」という企画自体にまず無理があるのですよ。
チャレンジ精神は評価したいですけど。

そしてまた、当時のアクションゲームの基準から見ても、
敵を倒すたびに「アシタハ アシタノ カゼガフク」だのといった変な迷言を残したり、
説明書で2コンは使わないと言いながら、最後の本拠地に入る方法が2コンを使ったほぼノーヒントのコマンド入力だとか、
当時のアクションゲームとしても正常とは言いがたいと思いますね。
(同じくノーヒントで難解なゲームがあったとしても、
 通常の操作体系の範囲で偶然にでも解けることがあるのと
 そんな操作はまず絶対にしないというのはレベルが違います)


で、私は、そういうヘンなところや理不尽さも含めて
当時のゲームが好きなわけですよ。
ハットリくんや六三四の剣だって正直子供のころからおかしいと思ってました
もっと言えばドンキーコングでせっかく面の頂上まで行っても
むざむざレディが連れ去られるのを黙って見てなければいけないこととかでさえ、
子供心にどうしても納得がいきませんでしたが、
だからと言って嫌いではなかったですし。







さらにもう1点、『れとろげ。』はそもそも
「現代の高校生目線で過去のゲームを見る」という設定が大前提なので、
当時の感覚で語ってたらおかしいんです。

例えば、先日のナツゲーミュージアムさんのイベントでも少し語らせていただいたのですが、
『れとろげ。』はアーケード、特に対戦格闘のネタが少ないですよね?

あれは、格ゲーというものは当時リアルタイムであの場にいて、
雑誌の情報や他のプレイヤーと技を学びあい成長していくという体験を経ていないと、
絶対にあのジャンルの作品の熱さは語り切れないと考えているからです。

そういった反面、ゲームギアで『ドラゴンクリスタル』をプレイするのは
コンシューマ・携帯機通して初のローグタイプのゲームであることに加え、
電池切れという時間制限との戦いが加わって(笑)今でもシレンよりもある意味面白いし、

バーチャルボーイはソフトラインナップこそ貧相ですが、
ディスプレイを覗き込むと赤い光のラインが立体的に見える、というのは
3DSが発売される今でも純粋に「ガジェットとして」魅力があるのです。


『れとろげ。』はもともと、GAMESIDE誌やGAME BRIDGEにちょっとでも人を集めようという、
言わば『日ペンの美子ちゃん』や『進研ゼミのパンフ漫画』みたいなものなんですよ(笑)。
作者陣のアクが強すぎて、一見そう見えないだけで。

だから展開や設定に、強引でご都合主義なところも確かにあるし、
そりゃ、日ペンや進研ゼミを何年もやってる人が読んだら
「そんなことわかりきってる」「上辺だけのことを書くな」
という感想になるのは当たり前ですよね。
でも、そういった漫画は必要だし、やるべき時期であると思いました。





そして、実はこれは、バカゲー専科なども含め、
ゲームライターとしての自分の一貫したスタイルでもあります。

『あくまでプレイの視点は現在に置く』。

補足情報として当時の背景を語ったりもしますが、基本はこうだと思います。
「あの当時としては画期的だったんだよ! 凄かったんだよ!」
なんて力説したりはしない。

なんでかと言うと、
そんなエクスキューズを付けなくとも、
現代の視点から見ても
ファミコン時代のゲームは面白いからです。

ものすごく単純な理由です。


グラフィックはシンプルだし、設定は突飛だし、理不尽だったりもするし、
でもそこが好きなんです。

けれども今、ライトな層がレトロゲームに触れても
 「何これ、すぐ死ぬじゃん」
 「何していいかわからない」
 「古臭くてつまらなさそう」

で終わってしまい、本当の面白さまで辿り着けないことが多い。
非常にもったいない。

私は、欠点が10個あっても、長所が3つ4つほどもあれば、
他人に薦めるに値すると思っています。
10個の欠点のほうが先に目に付いてしまうものなら特に。
それが「しょせんゲーム」だからなおのこと。
欠点も笑い飛ばせてしまうのが「しょせんゲーム」のいいところだから。


そんなレトロゲームに対しての水先案内だったのが『バカゲー専科』であり、
また、すでに卒業してしまった人たちにも、
「今になってもう一度振り返ってごらんよ」と呼びかけているのが『れとろげ。』なのです。



おかげさまで『れとろげ。』は想像していた以上に好評をいただいているのですが、
数少ない否定的意見は、決まってこの辺に起因している感があります。
「後世に生まれたムーヴメントに影響されず、当時のゲームは当時の基準で語らねばならない」
という原理主義的な強迫観念に縛られていると
ものすごい拒否反応があるみたいですね。


いや、本当は、『歴史的背景を踏まえて当時視点でレトロゲームを評論する』というのも
重要だと思いますよ。
自分はやらないというだけで、どちらが正しいなんて決まりごとはないし、
他の方にはむしろどんどんジャンジャンバリバリやってほしいです。
意義あることだし、カウンターカルチャーとしてこっちもより引き立つから。
やればいいじゃない、誰も止めてないし。
それは私の側に求めることじゃないっしょ(笑)


でも、結局のところそれらの多くが
「後からマニア的な大人目線のフィルタが掛かった回想」でしかなく、
真っさらな状態でゲームに触れた当時の子供の印象からも、
現代の一般ゲーマーが抱く感想からもどちらからも程遠くなってしまっていることに気付いていない。

自分の中だけの思い出を神格化して凝り固まって閉じこもり、
あとから来たライトユーザーを意味もなく見下して、
触れるのすら許さないとでも言わんばかりの排他的なマニア根性

そういったゲーム評論(と一部のジャンル)を自滅させてしまったと私は感じています。

あなた方こそ、「ゲームが好き」なんじゃなくて、
「ゲームに詳しくて語れる自分が好き」なだけなんじゃないかと。

「“自分は”気に食わない」「“自分の”考えとは違う」
「“自分のほうが”知識を持ってる」
「“自分と”違う視点でゲームを楽しむなんて間違っている」

自分が、自分が、自分が……。

はたして「他人にゲームを楽しんでほしい」という考えで語ったことがあるのかと。
むろん中にはいたかもしれませんが、そう問いかけたいですね。

結果、『バカゲー専科』などで私たちライターが取り上げてきたような側面ばかりが
ネットで過剰に一人歩きし、
本来それに対抗すべき“王道”が育たなかった……。
あの本の唯一の誤算と言えばそこですかね。




でもまぁ、そんなわけで、
『伯爵令嬢誘拐事件』に関しては、
私自身もたいへん思い入れがあるソフトなので全く退く気はありませんが(笑)

「いや、あれはこうだった」とか「あの当時こんなことがあったからそれを書け」とかのご指摘・ご意見は大歓迎なのですよ。
私とゆうぎ先生の記憶だけではどうしたってカバーしきれない部分がありますし。

また、ネタ作りや漫画技法としてまだまだ未熟な部分が多々あるのは承知しておりますので
今後も精進していきたいと思います。


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Posted by 白川嘘一郎 at 20:50│Comments(4)お仕事
この記事へのコメント
レトロゲーマーやオールドゲーム好きというと当時の思い出が語れてナンボ、という風潮はあるような気がします。
好き=楽しかった思い出が存在する、のは当然なのですが…。
あと、先日のイベントの年齢層の高さにはえらいびびりました。

『れとろげ。』はFC・SFCを懐かしむ世代よりももっと下の、PS・SS世代、レトロゲームをほとんど知らないけど興味がある人たちにこそ、かなりの求心力があるのではないか、と思っています。
なにせ主人公のあゆみ自身がまっさらですし。
(なので元ネタ解説もっと充実させてください、と個人的な希望を…)

個人的には古くても新しくても分け隔てなく「面白ければいい」と思うんですけども。
Posted by 京弥 at 2011年02月11日 16:08
読ませる文章もさる事ながら内容も当然ながら表現力その他諸々毎回使い古した言葉ですいませんが勉強になります。特に後半部分自分にも思い当たるふしがあるためとても耳が痛いとこもありましたw
Posted by Hattariyalow at 2011年02月11日 18:29
『れとろげ。』自体、リアルタイムではレトロゲームを経験しなかった登場人物達がレゲーに興じる姿を描いているので、自分達よりも下の人達に読んでもらいたい作品ではありますね。

ありがちなネタや定番ネタを適度に混ぜているので、個人的にはちょうど良いと思っています。
それと、単行本にあった元ネタ解説は、もう少しページ数があっても良いような気はしました(私のゲーム知識が、あまりにも偏っているからだと思いますが)。

>歴史的背景を踏まえて当時視点でレトロゲームを評論する
確かにこう言った評論もあれば良いとは思いますが、それは互いが“住み分け”をすれば良い訳であって、排斥すべきではないですよね。
どのような話題にしても、過剰に干渉する人達が出現するのには困ったものです。
そう考えると、文章のタイトルが非常に身に染みます。
Posted by 市藤勇美 at 2011年02月11日 19:24
>京弥さん
そうですね、やっぱりそのへんの世代にも読んでもらえたら一番なんですけど、
これからの動き次第ですね。

>Hattariyalowさん
まぁ、他を否定したり排斥したりしなきゃ
自分語りでもかまわないんですけどね。

>市藤さん
住み分けするための領土さえどんどん削られていってるのが現状なのに、
危機感もつわけでも、自分で何かするわけでもなく、
友軍を後ろから撃つだけですからねw

時の過ぎ行くままに滅び去っていくのもひとつの美学かもしれませんが、
それはやはり、あまりにももったいないと思いますし。
Posted by 白川嘘一郎白川嘘一郎 at 2011年02月14日 17:46
 
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