れとろげ。

ファンタジー風創作小説『ようこそ麒麟亭へ』

2008年06月09日

我が逃走

明けない夜はないと言うが、
 暮れない昼も存在しない以上、
 それはただの気休めでしかない。

 永劫に巡る昼と夜の中で、
 我らに与えられる選択肢はただ、
 瞳を開くか閉ざすか、それだけだ。


       ――『ウサギエル書』 第五巻8節


▼ いつからだろう。未来だの希望だの、ポジティブな単語ばかりがもてはやされるようになったのは。
 まるで悩むことや逃げることが悪であるかのようだ。

 文学・音楽・絵画など芸術の多くは、環境や運命や自己に対する苦悩と逃避から生まれる。
 技術や発明にしたって、大半は苦労や貧困からの逃避のためだろう。

 それでもなお世間は、ひたすら夢に酔うことだけを無責任に推奨する。

 涙の数だけ強くなろうと、
 世界の中心で愛を叫ぼうと、
 もともと特別なオンリーワンであろうと、
 人生には叶わない物事のほうが多い。

 それを踏まえた上で、それでもなお足掻きながら見続ける夢は美しいものだけど、
 最近起こる事件の大半は、そういう
“諦めなきゃいけない一線”の見極めが出来ない人が起こしているような気がする。

 と言うかそれ以前の問題として、“夢と希望”と“利己的な欲望”とを混同しているのかな。

 子供向けアニメの主人公たちも、夢や希望ばかり守らず、
 苦悩や絶望もきちんと守っていってほしい。



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Posted by 白川嘘一郎 at 00:00 │ウサギエル書